ココロバググレイガ

せっかくの日曜日だってのに起きたらもう20時だ。

別に途中で目が覚めなかった訳じゃないし、なんだか夢の中で嫌なことがあって暴れてたら実際に現実で脚を蹴り上げてたようで壁かなにかに当たって激痛が走ったのも覚えてる。

それでも起きなかったのは、起きられなかったのは少しでも現実から逃げたかったからだろうか。

正直休日に起きられずに一日が終わるなんてここ半年くらいじゃ珍しいことじゃなくてむしろ寝て過ごす方が多いほどだ。

 

じゃあそれほどまでに逃げ出したい現実ってなんなんだろうか。

 

とてつもなく大きくて苦しい嫌なことがやってきて、避けようがないとき、あこれもう無理だって諦めてその試合捨てちゃうのが正解の一つだったりするんだけど、それはまだ後ろに余裕がある時の選択肢であって、ぼくにはもうそんな残機は残ってないように思える。

いつか自分の心の均衡が大きく崩れてしまったときに、それを保つためって名目できっとぼくはそれを使い切ってしまったんだろう。

結局今となってもそのバランスはかなり不安定であるし、いろんなものを先延ばしにしてきただけで根本的にはなにも解決していない。

 

どうしようもなく巨大でどす黒く暴力的な現実、どうしたって避けられない逃げられない諦められないものが、今ぼくの目の前にある。

 

嫌らしくねちっこいそれは一気にぼくを圧死させるようなことはせずにまるで楽しんでいるかのように少しずつ丁寧にいたぶってくる。

その執拗さはまずぼくの精神的釣り合いを崩すことから始めた。

そうすることでぼくの認知の歪みは加速し、あらゆるものが敵に見えてくる。

周りの人間全員が邪悪な現実の尖兵と化すのだ。

 

こうなるとぶっちゃけどうしようもない。

些細なことでも鉛で頭をぶん殴られたような気がしてくるし、鋭利な刃物で串刺しにされているような気分になる。

 

そうしてぼくが自ら冷たいコレクションとなる道を選ぶのをゆっくりと待っている。

 

 

ぼくの座るシーソーの片側に一方的に圧倒的な質量で居座り、ブランコをめちゃくちゃに振り回し、滑り台の先で大きな口を開けて待っている。

そんな情景がぼくの脳裏にふと浮かんだ。

 

ぼくはこの強大で真っ黒な存在を公園から追い出す手段を知らない。

それはすでに公園の外をすっかり飲み込んでしまってどこまでも広がっているだろうから。

公園から逃げ出した瞬間、ぼくのことを嬉々としてその胃袋へと収めてすっかり溶かしてしまうのだろう。

 

そんな絶望感に包まれながらぼくは再び布団の中に潜った。

現実から少しでも長く逃げ続けるために。